高齢化社会が進む中で痴呆が増え,早期診断が必要になっています.

記憶の第一段階として覚える部位である海馬は、記憶をためる部位である側頭葉などのは別の場所といわれます。記銘力の検査により海馬の機能評価は可能になります。アルツハイマー病は海馬傍回の神経細胞の構造変化が原因で、二次的に海馬萎縮が生ずるといわれており、私たちはアルツハイマー病の海馬などの脳変化を頭部MRIで研究しました。今回、当院を受診した痴呆患者と正常者の海馬の容積をMRIを用いて比較し、さらに容積と記銘力の関係も検討した結果、記銘力の低下よりも海馬容積の減少が記銘力低下よりも早い時期に認められることが明らかになりました。

記銘力は年齢とともに減弱することは経験的にも知られていることで、今回の記銘力検査でも60才以降の減弱が明らかになりました.また痴呆が進行すると海馬体積は減少することも明らかになりました.記銘力減少と海馬体積の減少は相関関係を持ちながらも、海馬体積の減少が先行することも示唆されました。

今回の研究で記銘力の低下に気づく早期でも海馬の体積はすでに減少していることがあり、将来予測に役立つ可能性がある。これは脳ドックをうける上では重要な結果であるばかりでなく、予防的治療を検討する上でも重要であるといえる

アルツハイマー病と正常者の海馬萎縮とは明らかに異なり、アルツハイマー病の変化は病気として考えることが重要。さらにアルツハイマー病の海馬変化を年齢にさかのぼって、推定曲線でみると、50-60才頃よりわずかながら変化しはじめるといえる。したがって、頭部MRIをもちいた脳ドックはアルツハイマー病などを早期発見する上では意義がある。

記憶力の初期段階である記銘力は、数字を初めから順番に記憶する検査では、記憶力低下を発見することは困難であった。数字を逆に覚える逆唱検査では、早期に記憶力低下を発見できる。逆唱と海馬の容積の関係は、海馬容積が多いと記憶力も高いとする直線的関係が明らかになった。

上段は海馬容積の加齢変化

下段は海馬傍回の加齢変化

 

 

海馬の容積と記銘力の関係

 

海馬の容積が多いと、記銘力は高い。反対に少ない容積では記銘力は低い。

Y軸は逆唱項目の得点

X軸は海馬の容積(mm3)

正常者の海馬容積(青線)の減少は40才から始まり、、50ー60才は減少しなくなり、60才を過ぎてから、ふたたび減少しはじめる。アルツハイマー病(赤線)は80才で比較すると、正常者よりも海馬容積は減少している。推定曲線でみると、アルツハイマー病では60才頃より海馬萎縮がありうると推測できる。

海馬傍回の正常者の容積(緑色)には加齢による変化はなかったが、アルツハイマー病の80才の人たちには海馬傍回の容積減少がみられた。

広島厚生病院 病院新聞 第12号

左図は正常者のMRIで、海馬に変化はない。中図の海馬は軽度萎縮を示す。右図は高度の海馬萎縮がみられる。

年齢別の海馬容積変化

90才まで現役21世紀は脳の時代

左の資料は当院での結果です。それによると、海馬容積が減ると記憶力もそれに関連して低下することが分かります。だから、もしも記憶力が低下したら、それは年齢のためか、病気のためかを診断する必要があります。海馬容積は加齢によって減少することが分かっていますが、自分の年齢にみあう記憶力の程度も考えなければいけません。このように海馬の減少や記憶力の低下を総合的に判定する必要があります。もしも海馬が正常であるのに記憶力が低下した場合には、いろいろな原因があり、それを治療できる薬物を選択できれば回復する可能性があります。だから簡単に物忘れをあきらめるのではなく治療できるものは治療することが必要になります。また早期の海馬萎縮であると、最近の薬物治療を利用しながら進行を遅らせるような方法をとることが大切です。

海馬容積

テキスト ボックス: 記憶力

生理的老化

病的老化

MRIを用いた脳ドックは動脈瘤などの脳血管障害ばかりでなく、脳萎縮や海馬萎縮などの変化を安全に調べる最適の方法です。検査に必要な時間は30分です。

初期の症状

さっきの話したことを聞き直す

時間や時刻の感覚が乱れる

人の名前が出てこない

気持ちが弱気になる

相づちを打ちやすくなる

計算ができなくなる

物事への興味が減る

診断

アルツハイマー病

レビー小体病

前頭側頭葉型認知症

脳血管性認知症

パーキンソン症状群

甲状腺機能低下症

慢性硬膜下血腫